黄疸おうだん)” の例文
お腹の大きいのは腹水のためであり、黄疸おうだんは目につきませんでしたが、腹壁には“メデューサの首”の症候がはっきり現れておりました。
メデューサの首 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
恵源禅門えげんぜんもん直義公には、かねがね黄疸おうだんをわずらわれていたが、昨夜、事俄におかくれになった。お年もまだ四十七。惜しいことであられた」
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「いいえ、わたくし、奥さんにも長い間お目に懸っておりませんのよ。いつだったか黄疸おうだんていらしった時にお伺いしたっきりなんですの」
細雪:03 下巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
しかし黄疸おうだんがはやって、子供も夫もそれで死んでしまいました。私は彼女の夫の死亡証明書を見たことがあります。
黄色な顔 (新字新仮名) / アーサー・コナン・ドイル(著)
勇夫いさお兄さまは、あれは、黄疸おうだん色というんだよ、と悪口をいいましたが、あたしは、賛成しませんでした。
キャラコさん:08 月光曲 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
黄疸おうだんらしいと判ってから、その黄色の感じも幾分変ってきて、視界をおおう黄色の膜は、眼の外にあるのではなく、網膜に貼りついていることが、神経的に感じられた。
黄色い日日 (新字新仮名) / 梅崎春生(著)
おれはお前さまを抱いて、おっかさまのまくらもとへ連れて行ったことがある。あれがお別れだった。三十二のとしの惜しい盛りよなし。それから、お前さまはまた、間もなく黄疸おうだんまっせる。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
後できけば ちょいと町へ買い物にゆかない? かなにかで郊外の家からつれ出されたらしい。黄疸おうだんを病んだあげく永らくお父様の病気の看護をした疲れが回復していなかったのだそうだ。
結婚 (新字新仮名) / 中勘助(著)
わしも食ってみたよ。わしなんぞは腹が出来ているから、何を食っても、あんまり当りさわりということはないが、普通の人間は、たんと食えば黄疸おうだんのような顔色になって、やがて病気だ。
大菩薩峠:41 椰子林の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
一九一八年の夏は黄疸おうだんで二箇月寝込んだ。彼は自分の最後の日のあまり遠くないのを悟ったらしかった。それでもやはり仕事を続け、一九一八年には五篇、一九一九年には七篇の論文を出した。
レーリー卿(Lord Rayleigh) (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
「あの人、黄疸おうだんだったようネ」
地獄街道 (新字新仮名) / 海野十三(著)
幸子の黄疸おうだんは大して重いと云うのでもなしに長いこと恢復かいふくしないでいて、どうやら直りかけたのは入梅に這入はいってからであったが、る日彼女は本家の姉から見舞の電話をもらったついでに
細雪:01 上巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
「商売で覚えるんじゃないよ。おれも昔、黄疸おうだんをやったことがあるんだよ」
黄色い日日 (新字新仮名) / 梅崎春生(著)
薄化粧をしていてさえ黄疸おうだん病のような艶のない皮膚をしていた。
幸子さちこは去年黄疸おうだんわずらってから、ときどき白眼しろめの色を気にして鏡をのぞき込む癖がついたが、あれから一年目で、今年も庭の平戸の花が盛りの時期を通り越して、よごれて来る季節になっていた。
細雪:02 中巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
「もう、黄疸おうだんはいいのですか。あまり黄色くないようですねえ」
黄色い日日 (新字新仮名) / 梅崎春生(著)
蒔岡まきおかさんの奥さんとは随分仲好しなんだけれども近頃は掛け違って長いことお目に懸らない、いつだったか二三人で蘆屋のお宅をお訪ねしたら黄疸おうだんておられたことがあった、それがもう余程前で
細雪:03 下巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
「そしたら、何やろ、黄疸おうだんか知らん」
細雪:01 上巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)