麁相そそう)” の例文
「どうも取んだ麁相そそうを致しまして、何とも相済みませんでございます。おや、お顔を! お目をちましたか、まあどうも……」
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
こんな見方は、西洋では見られぬ。「茶」の方では美の理念として「麁相そそう」を説き、「閑味」を云々する。「麁」は粗で、荒々しいすがたである。
民芸四十年 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
船頭が麁相そそうで殿様を川へ落し、殿様は死去されたれば、手前は言訳いいわけがないから船頭は其の場で手打てうちに致したが、船頭ばかりでは相済まんぞ、亭主其の方も斬って仕舞うのだが
お前の娘と近所へ知れても、どこの何といふ素人に拾はれたとも知れずに済む。麁相そそうをした上、口賢ういふではないが、よ太一。天照大神八幡宮、春日明神三社を掛けて、誓ひを立てる。
移民学園 (新字旧仮名) / 清水紫琴(著)
「これは、どうも、麁相そそうして面目ない」と、甚六はきまり悪そうな顔をした。
一緒に歩く亡霊 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
「貴様は善くないぞ。麁相そそうを為たと思うたら何為なぜ車をめん。逃げやうとするから呼止めたんじや。貴様の不心得から主人にも恥をかかする」
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
大藏は物事が行届ゆきとゞき、優しくって言葉の内に愛敬があって、家来の麁相そそうなどは知ってもとがめませんから、家来になった者は誠に幸いで、屋敷中の評判が段々高くなって来ました。
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
驚き見れば長高たけたかき老紳士の目尻もあやしく、満枝の色香いろかに惑ひて、これは失敬、意外の麁相そそうをせるなりけり。彼は猶懲なほこりずまにこの目覚めざまし美形びけいの同伴をさへしばら目送もくそうせり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
此の日道具係の千代は一生懸命に、何卒どうぞ無事に役を仕遂しおおせますようにと神仏に祈誓きせいを致して、皿の毀れんように気を附けましたから、麁相そそうもなく、の皿だけはさがってまいります。
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
あはゝゝゝどうも麁相そそうはねえ詫びるより外に仕方がない、詫びて勘弁ならんという事は無い、重々恐入ったと詫びろ、能く来た、あの先生、先生/\勘弁してお遣りなさいお隅でござる
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)