鹿尾菜ひじき)” の例文
「字のことになると、自慢がないから、八も可愛らしいよ、——それにしても、こいつは鹿尾菜ひじきをバラいたやうぢやないか、お前讀んで見な」
朋輩女郎の話で無ければ『二じき鹿尾菜ひじき』といつたやうな所謂苦界の勤めの悲しい囘想談である。
俳諧師 (旧字旧仮名) / 高浜虚子(著)
それでも切昆布きりこぶ鹿尾菜ひじき油揚あぶらげ豆腐とうふとのほか百姓ひやくしやうつくつたものばかりで料理れうりされた。さらにはこまかくきざんでしほんだ大根だいこ人參にんじんとのなますがちよつぽりとせられた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
大概お総菜そうざいなど、朝は、しばのお汁、中飯にはちハイ豆腐か、晩は鹿尾菜ひじきに油揚げの煮物のようなものでそれはつましいものであった(朔日ついたち、十五日、二十八日の三日には魚を付けるのが通例です)
ソレ直ぐに鹿尾菜ひじきだいが浮いて出ようというものさ。
国貞えがく (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
鹿尾菜ひじき煮染にしめ総菜そうざいじゃ、碌な智慧ちえも出めえ——」
桜の実の熟する時 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)