鷹野たかの)” の例文
お将軍さまがお鷹野たかのや、ゆうべのように外出あそばさるときに、お徒歩かちでお守り申し上げる役目と相場が決まってるんでがしょう。
鷹野たかのに行くよりも身軽だった。保津川を渡り、丹波口から水尾みずのおへ上ってゆく。道は嵯峨さが村の本道から登るよりもはるかにけわしい。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
鷹野たかの野驅のがけ、遠乘りに頃合なので、代々の將軍始め、大名、旗本、諸家の留守居、若侍達に、一番人氣のあつた遊び場所でもあつたのです。
「なんだろう、あいつ、変な奴だった。鷹野たかのではあるまいし、獲物獲物と、獲物のことばかりいっていたが、おれは知らないよ、そんなものは」
剣侠受難 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
かつて殿様のお鷹野たかのの時に、御休息所になったという十畳の離座敷はなれざしきは、障子が新しく張換はりかえられ、床の間に古流の松竹がけられて、びの深い重代の金屏風きんびょうぶが二枚建てまわしてある。
笑う唖女 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
千住の家は徳川将軍が鷹野たかのに出る時、小休所こやすみじょにしたと云う岡田氏の家で、これにほとんど小さい病院のような設備がしてあったのである。父は小家に入って「身軽になったようだ」と云った。
細木香以 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
向い側は広い馬場でした。昔将軍がお鷹野たかののお小休に、食後のはしを落されたといういい伝えで、二本の大杉が鬱蒼うっそうとそそり立っていて、遠く白山坂上からも見えました。朝など雉子きじの鳴く声がします。
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
鷹野たかの野駆のがけ、遠乗りに頃合なので、代々の将軍始め、大名、旗本、諸家の留守居、若侍たちに、一番人気のあった遊び場所でもあったのです。
年少すでに童色どうしょくを談じ、小身者しょうしんものはよく猥褻わいせつをささやくので、それと語るのを歓び、歌舞伎のまねをしていつのまにか三味線を覚えたり、また、鷹野たかのにでも行く時は
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
鷹野たかのに召し連れていった小姓の采女に念を押していられましたが、先にたってそこのくぐり門から庭先へはいっていくと、足もとを指さしながらおごそかにいわれました。