魚介ぎょかい)” の例文
ここでは旧套きゅうとうの良心過敏かびん性にかかっている都会娘の小初の意地も悲哀ひあい執着しゅうちゃくも性を抜かれ、代って魚介ぎょかいすっぽんが持つ素朴そぼく不逞ふていの自由さがよみがえった。
渾沌未分 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
といって出た饗膳にも、裏日本の味ともいえる魚介ぎょかいの新鮮や山野の菜根さいこんが、ゆかしく調理されていた。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
山に行けば、悪獣とも親しみ、海に入れば、文字通りに魚介ぎょかいを友として怖れないことを知っている。
大菩薩峠:25 みちりやの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
何という湿気しっけの多い気候でしょう。障子を閉めきり火鉢ひばちに火を入れて見ても着ている着物までがれるようなので、私は魚介ぎょかいのように皮膚にうろこが生えはしないかと思うほどです。
監獄署の裏 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
支那には果実の珍しきもの多けれど菜蔬に至つては白菜はくさい菱角りょうかく藕子ぐうし嫩筍どんじゅん等のほかわれまた多くその他を知らず、菜蔬と魚介ぎょかいあじわい美なるもの多きはこれ日本料理の特色ならずとせんや。
矢はずぐさ (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
海に入っても魚介ぎょかいと遊ぶことを心得ているのだから、今夜の、この静かな海の中の、どこへ沈められたからといって、豚の子のように、沈みっきりになってしまう気づかいは絶対にありません。
大菩薩峠:26 めいろの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)