鬱結うっけつ)” の例文
断末魔のもがき、末期まつごの悲鳴、それが身心に感じられたとたん、鬱結うっけつしていた血汐が下がり、圧迫されている心持ちが、一時に緩んで生き生きとなった。
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
今、弦之丞が、優しい言葉で聞いてくれたのを幸いに、鬱結うっけつしていた血の塊りを吐くように、この一年、思いつめていた心のたけを、とぎれとぎれに、打ち明けた。
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
お玉が胸に鬱結うっけつしている物の本体は、強いて条理を立てて見れば先ずこんな物ででもあろうか。
(新字新仮名) / 森鴎外(著)
とかく鬱結うっけつしやすかった血液も濃く重たいなりにもなめらかに血管の中を循環し、海から来る一種の力がからだのすみずみまで行きわたって、うずうずするほどな活力を感じさせた。
或る女:1(前編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
蒼空あおぞら培養硝子ばいようガラスを上からかぶせたように張り切ったまま、温気うんきこもらせ、界隈かいわい一面の青蘆あおあしはところどころ弱々しくおののいている。ほんの局部的な風である。大たい鬱結うっけつした暑気の天地だ。
渾沌未分 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
彼はこの最後の一句を、鬱結うっけつせる苦痛のつぶやきをもって発したのである。
どことなく鬱結うっけつしているものが、院のほかから炎をいて出ることが祈られた。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)