“髪毛（かみ）” の例文
旧字：髮毛
中林先生の深い深い親切と智慧に、驚いて、感心してしまいながら、その乱れた髪毛（かみ）の下に光る凜々（りり）しい瞳の光りを見上げていた。
継子 (新字新仮名) ／ 夢野久作(著)
「頭を出すな」そうどなりながら、石の上へ向うから幸太がとび上って来た、「……髪毛（かみ）へ火がつく、ひっこんでろ」
柳橋物語 (新字新仮名) ／ 山本周五郎(著)
そうだ。妾（わたし）はこれから恋を探さなければならない。そうして卵を沢山に生んで、可愛い子供をウジャウジャ撒（ま）き散らして、世界中の女の髪毛（かみ）を
髪切虫 (新字新仮名) ／ 夢野久作(著)
ただ、皮膚の色が陶器のように白く冴（さ）えてきたのと、ひっ詰めにうしろで束ねた漆黒の（少し多すぎる）髪毛（かみ）とが、その病気の特徴をあらわしているようであった。
花も刀も (新字新仮名) ／ 山本周五郎(著)
蓬々（ぼうぼう）と乱れた髪毛（かみ）と髯（ひげ）の中から、血走った両眼をギョロギョロと剥（む）き出して、洗濯板みたいに並んだ肋骨（あばらぼね）を撫でまわしてゼイゼイゼイゼイと咳（せき）をした。
鉄鎚 (新字新仮名) ／ 夢野久作(著)
色の黒い、どこにも特徴のない平凡な顔だちであるが、躯（からだ）だけは逞（たくま）しく、力士のような肩を持っていた。剣客というよりも、農夫か樵夫（きこり）といった感じで、髪毛（かみ）もまだ黒かった。
花も刀も (新字新仮名) ／ 山本周五郎(著)
老婆も私とさし向いに坐ったが、瘠せ枯れた白い手で襟元を直して、蓬々（ほうほう）と逆立（さかだ）った髪毛（かみ）を撫で上げた。
空を飛ぶパラソル (新字新仮名) ／ 夢野久作(著)
母の灰色になった髪毛（かみ）が
蜆谷 (新字新仮名) ／ 山本周五郎(著)
妾はよい都合と喜びまして、兼（か）ねてから髪毛（かみ）の中に隠しておいた宝蛇を、美紅姫の懐に押し込みました。
白髪小僧 (新字新仮名) ／ 夢野久作、杉山萠円(著)
今にも妾を殺すのじゃないか知らんと思い思い、その高い薄っペラな鼻や、その両脇に凹（くぼ）んでいる空色の眼や、綺麗に真中（まんなか）から分けた栗色の髪毛（かみ）を見つめていたようよ。
支那米の袋 (新字新仮名) ／ 夢野久作(著)
その黒い髪毛（かみ）の前の方を切り下げている恰好がドウ見ても西洋人とは思えません。
人間腸詰 (新字新仮名) ／ 夢野久作(著)
妾の寝台（ねだい）の上には、妾の寝巻を着た、妾そっくりの女が、平然（ふだん）妾がする通りに髪毛（かみ）を寝台の左右に垂らして、スヤスヤと睡っているでは御座いませんか……ハッと驚いて自分の着物を探って見ますと
白髪小僧 (新字新仮名) ／ 夢野久作、杉山萠円(著)
頬から髪毛（かみ）の中に這い上っていた。
幽霊と推進機 (新字新仮名) ／ 夢野久作(著)