馬乗うまのり)” の例文
旧字:馬乘
馬乗うまのりの上手な者が馬丁べつたうになり、女の手を握る事の好きな男が医者になるやうに、すべての芸能は、その人に職業しごとを与へて呉れるものだ。
提灯ちょうちん五張いつはり、それも弓張ゆみはり馬乗うまのりの定紋つきであった。オーバアの紳士、道行を着た年配者、羽織袴のは、外套を脱いで小脇に挟んでいる。
卵塔場の天女 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
それから第二の御布告おふれあかがねの板に書きまして、馬乗うまのりの上手な四人の兵士に渡して、四方の国々の王宮へ即座に出発させました。
白髪小僧 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
広巳は双子に帯際にきつかれながら、俯伏うつぶせに倒れた紺の腹掛の上に馬乗うまのりになっていた。
春心 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
二人は向いあって、腰掛に馬乗うまのりに腰かけていた。木村は、軽い元気のない咳をした。
(新字新仮名) / 黒島伝治(著)
再度にど吃驚びっくりしたというのは、仰向きに寝ていた私の胸先に、着物も帯も昨夜ゆうべ見たと変らない女が、ムッと馬乗うまのりまたがっているのだ、私はその時にも、矢張やっぱりその女を払いける勇気が出ないので
女の膝 (新字新仮名) / 小山内薫(著)
むかし矢野大膳といふ馬乗うまのりの名人が居た。ある時友達のところを訪ねようとして馬に乗つて出掛けた。晴れた美しい秋の日で、町には人間や赤蜻蛉あかとんぼが羽をして飛びまはつてゐた。