さん)” の例文
ある時、汽車の旅の無聊ぶりょうに、みんながさんを共にし、酒も飲んだ。日本の留学生の二三は快活に飲み快活に話したが、二三の留学生は黙々として何も語らない。
ドナウ源流行 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
仙人は流霞りゅうかさんし、朝沆ちょうこうを吸う。詩人の食物は想像である。美くしき想像にふけるためには余裕がなくてはならぬ。美くしき想像を実現するためには財産がなくてはならぬ。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
頓て朝さんも済み、又一回り運動して、爾して愈々昨夜(寧ろ今朝)出た幽霊の跡を検めて見る積りで塔の四階へ上って行ったが、余よりも先に秀子が居て、物思わしげに廊下を徘徊して居る
幽霊塔 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
「そういうなよ、漂母のさんだよ。婆やの里から来たんだよ。」
薄紅梅 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ただ詩人と画客がかくなるものあって、くまでこの待対たいたい世界の精華をんで、徹骨徹髄てっこつてつずいの清きを知る。かすみさんし、露をみ、ひんし、こうひょうして、死に至って悔いぬ。彼らの楽は物にちゃくするのではない。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)