風韻ふういん)” の例文
受けたものはコロコロと、太い管の中を転落して、タンクの中に入るから牛馬先生は、遥かに余韻よいん嫋々じょうじょうたる風韻ふういんを耳にするであろう。
発明小僧 (新字新仮名) / 海野十三佐野昌一(著)
長谷川君の書に一種の風韻ふういんのある事もその時始めて知った。しかしその書体もけっして「其面影」流ではなかった。
長谷川君と余 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ヤレ自然の美だ風韻ふういんだのと大層高尚こうしょうらしい事を唱える癖に今の文士はく下品な卑しい忌味いやみな文章を書きたがる。
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
次に色彩ですが、これなども錦絵の方が、ずっと優雅な味のある深みのある、風韻ふういんのあるものになっています。
だって君の外套がいとうは、僕の意見によると、まだ役に立つばかりか、特殊の風韻ふういんさえ帯びているからね——シャルメルの店なんかへ注文したら、たいへんなもんだぜ。
父の友人、小説家井伏鱒二が、文章というものは上達に向かって長年苦労を重ねてきても結局は松尾芭蕉の風韻ふういんに帰るのだ。と、いったことがある。釣りも人生も、同じだ。
(新字新仮名) / 佐藤垢石(著)
が、到底いつわり難きは、各自に備わる人品であり風韻ふういんである。果実を手がかりとして、樹草の種類を判断せよとは、イエス自身の教うる所である。とげのある葡萄ぶどうや、無花果いちじくはどこにもない。
線の曲直きょくちょくがこの気合の幾分を表現して、全体の配置がこの風韻ふういんのどれほどかを伝えるならば、形にあらわれたものは、牛であれ馬であれ、ないしは牛でも馬でも、何でもないものであれ、いとわない。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)