びん)” の例文
京子の一びんしょうに、彼女の幸福や不幸が宿っているのだった。京子の機嫌の悪いときは、彼女の生活は暗くなってしまうのだった。
第二の接吻 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
無暗に豪傑振つて女を軽蔑したがるくせに高が売女ばいぢよの一びん一笑に喜憂して鼻の下を伸ばす先生方は、何方どつちかといふと却て女の翫弄物ぐわんろうぶつだ子。
犬物語 (新字旧仮名) / 内田魯庵(著)
政治まつり朝廟ちょうびょうで議するも、令は相府に左右される。公卿百官はおるも、心は曹操の一びんしょうのみ怖れて、また、宮門の直臣たる襟度きんどを持しておる者もない。
三国志:05 臣道の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
三十五六の食えそうもない大年増で、この一びん一笑が小左衛門に大きな影響を及ぼしそうです。
ましてやその一びん一笑によって、国も傾く女魔にょまがおつきなのです。
嫂が義兄にそっとしてみせる一びん一笑をぬすみ見たり、ぼくの御飯茶碗へ、兄のついでに、御飯を盛ってくれる白い指先へ、特異なよろこびをもったりした。
彼の一びん一笑が気になった。彼が気にしまいとすればするほど、気になって仕方がなかった。
蘭学事始 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
小左衞門の後ろに、人形と人形遣ひのやうにひかへたのは、女房のお仲でした。三十五六の食へさうもない大年増で、この一びん一笑が小左衞門に大きな影響を及ぼしさうです。
やっと彼女をなだめ得ただけでも村重はほっとした顔であった。かえって彼の方から話をほかにまぎらわせたりして、ようやく室殿の一びんしょうを拾うの有様であった。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ポツチリ咲いたやうなくちびるの魅力など、一つ/\の美しさはかぞへ立てても際限がありませんが、何より、躰内に灯された處女の生命が、一びん、一笑、一擧手、一投足に、恐ろしいばかりの光明ひかりになつて
現状の柳営では、五人の老中の言葉よりも、出羽守の一びんしょうの方が、御表をも、大奥をも、左右している有様だし、将軍家に至っては、まるで彼のあやつる糸のままに感情があらわされる。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)