頬肉ほおじし)” の例文
ト見ると襖から承塵なげしへかけた、あまじみの魍魎もうりょうと、肩を並べて、そのかしら鴨居かもいを越した偉大の人物。眉太く、眼円まなこつぶらに、鼻隆うして口のけたなるが、頬肉ほおじしゆたかに、あっぱれの人品なり。
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
五分刈ごぶがりのなだらかなるが、小鬢こびんさきへ少しげた、額の広い、目のやさしい、眉の太い、引緊ひきしまった口の、やや大きいのも凜々りりしいが、頬肉ほおじしが厚く、小鼻にましげなしわ深く、下頤したあごから耳の根へ
悪獣篇 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ものの切尖きっさきせたおとがいから、耳の根へかけて胡麻塩髯ごましおひげが栗のいがのように、すくすく、頬肉ほおじしがっくりと落ち、小鼻が出て、窪んだ目が赤味走って、額のしわは小さな天窓あたま揉込もみこんだごとく刻んで深い。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)