雲母きらゝ)” の例文
陽は午前の十一時に近く、川も町のいらかも、野菜畑や稲田も、上皮を白熱の光に少しずつ剥がされ、微塵の雲母きらゝとなって立騰たちのぼってるように見えます。
生々流転 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
カツと晴れた秋日和の午後、二時は過ぎて居たらう、濃い蒼空にはカツキリ白い雲が雲母きらゝのやうに輝いて居る。九月の日は明るかつた。夏よりも明るい。
茗荷畠 (新字旧仮名) / 真山青果(著)
それはにしきふくろ這入はいつた一しやくばかりのかたなであつた。さやなにともれぬ緑色みどりいろ雲母きらゝやうなもので出來できてゐて、その所々ところ/″\が三ヶしよほどぎんいてあつた。中身なかみは六すんぐらゐしかなかつた。したがつてうすかつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
うつゝなきまひるのうみは砂のむた雲母きらゝのごとくまばゆくもあるか
芥川竜之介歌集 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)