雪解ゆきど)” の例文
ついそこらのやぶや山畑のくぼには、斬り捨てられた落武者のかばねがそのままになっていて、雪解ゆきどけの昼となれば屍臭を放っている。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あなたたちは、岩穴いわあななかでゆっくりねむりなさるがいい。かれこれするうちに、じきに四、五がつごろとなります。あの水晶すいしょうのようにあかるい雪解ゆきどけのはる景色けしきはなんともいえませんからね。
しんぱくの話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
雪解ゆきどけのせはしき歌はいまなれをぞうたふ。
詩集夏花 (新字旧仮名) / 伊東静雄(著)
おおせにはござりますが、勝家かついえ一族が、ご当家を袋攻ふくろぜめにせん奇陣をくふうし、雪解ゆきどけとどうじに出陣の密策みっさくをさぐってまいりましたゆえ」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「そうじゃ、どうしても、師の法然御房ほうねんごぼうにお会い申したい。雪解ゆきどけを待っていては、三月になろう。同じ雪のあるうちなら、今の間に——」
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「さきほど、軍師ぐんし八風斎はっぷうさいどのが、列席のおりには、秀吉ひでよし退治たいじのご出陣は、来春の雪解ゆきどけと、同時に遊ばすことに決したではござりませぬか」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
おりから、裾野すそのにいた鏃鍛冶やじりかじ卜斎ぼくさいも、柴田しばたの家中へひきあげて、北庄城ほくしょうじょうでは雪解ゆきどけとともに、筑前守秀吉ちくぜんのかみひでよしと一戦をなす用意おさおさおこたりなく、国境のせきはきびしい固めでござります
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
雪解ゆきどけの赤い濁流が、樹々の間に奔濤ほんとうをあげて鳴っていた。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)