陶器せともの)” の例文
正介は「坊ちゃまそら敵だッ」と仏壇の陶器せとものの香炉を打ち付ける、灰が浪江の両眼に入る、ここぞと正介は「樫の木の心張棒で滅多打ちに腰のつがい
その他そこらには呉服屋、陶器せともの屋、葉茶屋、なぞがあったようだが私はそれらについて懐かしい何の思い出もない。
山の手の子 (新字新仮名) / 水上滝太郎(著)
店には壊れた陶器せとものが山をし、壊される端から店の女が莞爾にこ/\して新しい皿や鉢を棚に並べて居る。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
無器用なようで雅致のある支那風の陶器せとものとか、刺繍ぬいとりとか、そんな物まで未だ山本さんの眼についていた。組を造ってよく食いに行った料理屋の食卓の上も忘れられなかった。
(新字新仮名) / 島崎藤村(著)
薔薇の這つた門や陶器せとものの大きい植木鉢に植ゑられた一丈位の柘榴ざくろや櫻の木の竝べられてあるのも見える。其家の前は裏の通なのであるが、夜更にでもならなければ車の音などは聞えて來ない。
巴里にて (旧字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
昼間の光に薄黄色い火の線と白い陶器せとものの笠とが充分いつぱいにダラリと延ばした紐の下で、畳とすれすれにブランコのやうに部屋中揺れ廻つて居る、地震かしらと思ふ内に赤坊あかんぼが裸で匍ひ出して来た
桐の花 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
といって葛桶かつらおけを——じゃない——その陶器せともの床几しょうぎをすっと立ちました。
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
陶器せとものの火鉢をひっぱり出して燃してしまった。
遠藤(岩野)清子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
細長い陶器せとものの火鉢を各自めいめいに出すのがこの家の習慣に成っていた。その晩はある音楽者の客もあって、火鉢が何個いくつも出た。ここはすべてが取片付けてあって、あまり部屋を飾る物も置いて無い。
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
薔薇ばらつた門や陶器せとものの大きい植木鉢に植ゑられた一丈ぐらゐ柘榴ざくろや桜の木の並べられてあるのも見える。その家の前は裏のとほりなのであるが、夜更よふけにでもならなければ車の音などは聞えて来ない。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)