いやし)” の例文
江戸時代に町人と称して自らいやしうしておった城下の店持ちでも、ほとんと一戸として昔からの商人であったものはないといってよろしい。
家の話 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
彼が最愛の妻は、その一人を守るべき夫の目をかすめて、いやしみてもなほ余ある高利貸の手代に片思の涙をそそぐにあらずや。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
衣兜かくしを探りて、金光燦燗さんらんたる時計を出だし、うやうやしく隻手かたてに捧げてはるかに新開地に向い、いやしあざけるごとき音調にて
金時計 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
(中略)。其のいやしき者は、当時之を諸国に分置し、各自郷をなして土着者と相雑はらず。故に其の種落を謂つて余戸となす。大抵外国人獣肉を屠るに慣る。故に屠を以て業と為す。
エタ源流考 (新字新仮名) / 喜田貞吉(著)
わたしはどうしてもいやしいと思います。6525
会員等は富山がしきりに子爵に取入るを見て、皆その心を測りかねて、大方は彼為かれためにするところあらんなど言ひていやしみ合へりけれど、その実あへて為にせんとにもあらざるべし。彼は常にその友を択べり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)