閻王えんおう)” の例文
(やあ、ご坊様ぼうさま。)といわれたから、時が時なり、心も心、後暗うしろぐらいので喫驚びっくりして見ると、閻王えんおう使つかいではない、これが親仁おやじ
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
歴々としてなお閻王えんおうの法廷にかれて照魔鏡の前に立たせられたるに異ならず、しかして今しも吹くる風、怪しくも墓の煙を彼が身辺に吹きよせたり
空家 (新字新仮名) / 宮崎湖処子(著)
「されば、閻王えんおうの旨により、太師を冥府めいふへ送らんとて、はや迎えに参っているものとおぼえたりっ」
三国志:03 群星の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
閻王えんおうは直に余に同情をよせたらしく
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
閻王えんおうの眉は発止はっしと逆立てり
六百句 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
閻王えんおうの口や牡丹をはかんとす
郷愁の詩人 与謝蕪村 (新字新仮名) / 萩原朔太郎(著)
閻王えんおうの使者に追立てられ、歩むに長き廻廊もしにく身はいと近く、人形室に引入れられて亡き母の存生いまそかりし日を思い出し、下枝は涙さしぐみぬ。
活人形 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
どうかすると大廂おおびさしに、三位頼政の首がぶら下がっているの、屋根のうえを、義朝の軍馬がけるの、閻王えんおうを呼べの、青鬼、赤鬼どもが、炎の車について、厩舎門うまやもんの外に来ているのと
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
閻王えんおうの口や牡丹を吐かんとす
俳人蕪村 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
面に朱をそそいで、周瑜の指は、閻王えんおう亡者もうじゃを指さすように、左右へ叱咤した。
三国志:07 赤壁の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
閻王えんおうの口や牡丹を吐かんとす
俳人蕪村 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
一片の情、一滴の涙も知らぬような面は、閻王えんおうを偲ばしめるものがあった。
三国志:05 臣道の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
お杉ばばは、お通を指さして、断獄を命じる閻王えんおうのようにいった。
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
八葉の車を曳いた閻王えんおうの使いが、焔をあげて夜空からけ下り
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)