間代まだい)” の例文
お千代は夜ごとに深みへとちて行った。その代り質屋の利息のみならず滞った間代まだいもその月の分だけは奇麗に払えるようになった。
ひかげの花 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
お君さんはその実生活の迫害をのがれるために、この芸術的感激の涙の中へ身を隠した。そこには一月六円の間代まだいもなければ、一升七十銭の米代もない。
(新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
早く逃げ出そう逃げ出そうと思っていて、間代まだいの安いのと、婆さんが決して悪者ではないと思ったので急がずに、もはや来てから二週間ばかりも過ぎた。
老婆 (新字新仮名) / 小川未明(著)
貧富にかかわらず一日二クロウネ半が、手術から医薬から看護から間代まだい食費まですべてをふくむ入院料だという。
踊る地平線:05 白夜幻想曲 (新字新仮名) / 谷譲次(著)
普通の間代まだいを定め、食費その他の事に就いても妻の里のほうで損をしないように充分に気をつけ、また、私に来客のある時には、その家の客間を使わずに
薄明 (新字新仮名) / 太宰治(著)
その時は間代まだいを払って、隔日に牛肉を食って、一等米をいて、それで月々二円ですんだ。もっとも牛肉は大きななべへ汁をいっぱいこしらえて、その中に浮かして食った。
満韓ところどころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
そうすれば、私のほうでもわざわざ宿直を置かないでいいし、君にも間代まだいが出なくって経済になる。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
私の払ってあった間代まだいがきれたというので、家主から請求にあった。無論私には払えなかった。
僕は薄気味が悪くなって、もう何も話す元気がなくなったので、そうそうに立ち去ってしまった。もちろん約束通りに一週間分の間代まだいを払って来たが、そのくらいのことで逃げ出せればやすいものさ
家主やぬし硝子屋ガラスやへは出放題の事を言って、間代まだいの残りも奇麗に払い、重吉は荷物の半分を新橋駅しんばしえきの手荷物預り処に預け
ひかげの花 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
もっとも一月ひとつき五円の間代まだいに一食五十銭の食料の払いはそれだけでも確かにに合って行った。
十円札 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
そこで、食料や間代まだい蒲団ふとん代をひっくるめて十五円ずつ君の収入から引くこととしよう。場所も一番よく売れる三橋みつはしの売場を君にやろう。そうすりゃ、学校へ行くぐらいの費用は楽に浮いて来る
その代り間代まだい、米代、電燈代、炭代、肴代さかなだい、醤油代、新聞代、化粧代、電車賃——そのほかありとあらゆる生活費が、過去の苦しい経験と一しょに、あたかも火取虫の火に集るごとく
(新字新仮名) / 芥川竜之介(著)