)” の例文
五つ六つ七八つ続けざまに小腰をかがめて、どぎまぎ立ち上がる山木を、主人中将は玄関まで送り出して、帰り入る書斎の戸をばはたとしたり。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
今はじめて、しかも戸をしてひそかにまなぶということです、しかもその戸は、おのれ自身の心にもあるのですから、自分の心の一部にさえ戸をさなければならない
菊屋敷 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
この時分までは木戸をさなかったのが、戦争の前後は世の中が物騒なので、町々の木戸を閉したのでしたが、木戸番は番太郎といって木戸傍の小屋で、荒物やのりなど売っていたのが
江戸か東京か (新字新仮名) / 淡島寒月(著)
燈火のとどかぬ庭の瀧のおとを獨り聽きつつ戸をしかねつ
追分は夕光ゆうかげを戸をして本陣のまへに寝る犬があら
海阪 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
云いさま、ぐいと引入れて後手に障子をぴたりとす、顎をしゃくって
暗がりの乙松 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
白い障子をしたそれらの座敷に添って、高廊下をゆき、もういちど左に曲ると、原田家の座敷の前へ出た。宇乃はそこで立停って、くらくなりはじめた庭のかなたを見た。そこにもみノ木があった。