門燈もんとう)” の例文
女はその横町を往って四辻よつつじに出ると、左の方に折れて往った。そこは狭い門燈もんとうもぼつぼつしかない暗い横町であった。
女の怪異 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
「おい、子供こども、あっちへいってやれ、門燈もんとうをこわすと大事おおごとだ。ここはひとのとおるみちで、ボールをげてあそ場所ばしょでない。こんど、へいにあたるとゆるさないぞ。」
日の当たる門 (新字新仮名) / 小川未明(著)
謙作は煙草のみさしを捨てて入口の方へ注意した。門燈もんとうのぼんやりとともっている入口のガラス戸がすぐ見えた。
港の妖婦 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
岡持おかもちげた女房の体は、勾配こうばいの急な坂をおりて、坂の降り口にあるお寺の石垣に沿うて左へ曲って往った。寺の門口かどぐちにある赤松の幹に、微暗うすぐら門燈もんとうが映って見える。
黄灯 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
そして、五六ちょう往ってちょっとした横町よこちょうを右へ折れ曲って往くと、家の数で十軒も往った処の右側の門燈もんとうに「喜楽きらく」と書いた、牛肉屋とかしわ屋を兼ねた小料理屋があった。
雨夜続志 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
門燈もんとうのすくない街は暗かった。父親は二人のあとからとぼとぼと体を運んでいた。
藍瓶 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)