とこしえ)” の例文
……雲を貫く、工場の太い煙は、丈に余る黒髪が、もつれて乱れるよう、そして、さかさまに立ったのは、とこしえに消えぬ人々の怨恨うらみと見えた。
南地心中 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
年四十八。子ナシ。本郷ノ某寺ニ葬ル。銘シテ曰ク、既ニ風月ヲ楽ミ、マタ美禄ニ飽ク。杯ヲなげうツテ一タビスルヤ、とこしえニ眠ツテ覚メズ。誰カ薄命トイフ。ワレハコレヲ福トイハン。友人西島げい
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
とこしえに辛苦せしむるなかれ。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
ここ嶮峻けんしゅんなる絶壁にて、勾配こうばいの急なることあたかも一帯の壁に似たり、松杉を以て点綴てんてつせる山間の谷なれば、緑樹とこしえに陰をなして、草木が漆黒の色を呈するより、黒壁とは名附くるにて
妖僧記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)