鎧甲がいこう)” の例文
両軍は祁山きざんの前に陣を張った。山野の春は浅く、陽は澄み、彼我ひが旌旗せいき鎧甲がいこうはけむりかがやいて、天下の壮観といえる対陣だった。
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
まだえきらないうしきずの身に鎧甲がいこうを着けて、周瑜は剛気にも馬にとびのり、自身、数百騎をひきいて陣外へ出て行った。
三国志:08 望蜀の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
すると右陣の劉封は、父玄徳の威をうしろに負って、これも華やかな鎧甲がいこうを誇りながら、たちまち駒を飛ばして出た。
三国志:09 図南の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
家にひそんで食をむさぼり老慾にふけりてあるなら助けもおくべきに、何とて、似あわしからぬ鎧甲がいこうよそおいて、みだりにこの陣前へはのさばり出たるか。
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
陽は烈々、中天に午刻ひるどきの近きを思わせ、鎧甲がいこうの鮮血も忽ち乾いて、うるしねのような黒光りを見せている。
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
赤兎馬せきとばは、久しぶりに、鎧甲がいこう大剣の主人を乗せて、月下の四十五里を、尾をひいて奔った。
三国志:04 草莽の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
西羗せいきょう鼠賊そぞくが、権者の鎧甲がいこうを借りて、人に似たる言葉を吐くものかな。われはただ今日を嘆く。いかなれば汝のごとき北辺の胡族えびすの血を、わが年来の晃刀こうとうに汚さねばならぬか——と。
三国志:09 図南の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)