鍔音つばおと)” の例文
刀の血糊ちのりを拭いてとると、チーンと鳴りのいい鍔音つばおとをさせて、金右衛門と肩をならべて石段を一歩、一歩、と降りかけます。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ピカピカ二三べんひらめかしたと思うと、スラリとまたさやの中へ叩き込んで、多少の鍔音つばおともさせませんでした。
大菩薩峠:37 恐山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
休之助は持っていた刀で、ぱちんとするどく鍔音つばおとをさせた。伝次はぴくりと首をちぢめた。
風流太平記 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
ぱちりと鍔音つばおともろともさやへ納めると、例のごとく伝六に早駕籠かごを命じて、用意のできるや同時に、先を急ぐもののごとく少年僧黙山を促しながら、自分の駕籠に共乗りさせると
その拍子に手もとが狂って、思わず鋭い鍔音つばおとを響かせてしまったのではございませんか。
邪宗門 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
それからゆるゆるとぬぐったが、単に塵埃ほこりをふいたまでである。すぐにささやかな鍔音つばおとがした。無造作に刀を納めたのであろう。胸のあたりへ手をやったが、乱れた襟を直したのである。
娘煙術師 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
梅渓は、わざと足どりを千鳥にして、辻斬をる空ッぽの折詰をぶらぶらさせた。狐、浅ましくも引っかかった。おあつらえの黒いでだち、ばすッと、鍔音つばおとを感じたので、梅渓は
田崎草雲とその子 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
兵馬は、主膳の枕許の刀架かたなかけから刀を取って、その鍔音つばおとを高く鳴らすと
大菩薩峠:17 黒業白業の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
鍔音つばおとがした!
血曼陀羅紙帳武士 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
と、こじりを上げて、ぶるぶると、右手のこぶしに、鍔音つばおとをさせた。
無宿人国記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)