釜石かまいし)” の例文
尻屋しりやの燈台、金華山きんかざんの燈台、釜石かまいし沖、犬吠いぬぼう沖、勝浦かつうら沖、観音崎かんのんざき浦賀うらが、と通って来た。そして今本牧ほんもく沖を静かに左舷さげんにながめて進んだ。
海に生くる人々 (新字新仮名) / 葉山嘉樹(著)
そのうち彼の強烈な釜石かまいしへの艦砲射撃が行はれた。その音といふものは、まるで地軸をゑぐるといつたやうな強烈な音であつた。
三年 (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
久慈くじから南、釜石かまいしから北、ことに閉伊二郡の村々においては、旧家というよりも名族と呼ぶよりも、カバカワの家と聞くほうがわかりが早い。
雪国の春 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
岩手県の方にいる友からはこの頃、便たよりがなかった。釜石かまいしが艦砲射撃にい、あの辺ももう安全ではなさそうであった。
壊滅の序曲 (新字新仮名) / 原民喜(著)
そこは釜石かまいしに近いなにがしと云う港町であったが、数日前に襲って来た海嘯つなみのために、この港町も一嘗ひとなめにせられているので、見るかぎり荒涼としている中に
海嘯のあと (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
乗り出すと、表向は江戸の方へ帰るというおふれ込みでしたがね、本当のところは宮古みやこの港へ向けてお立ちになったんだが、その前に釜石かまいしの港というのへお着きのはずなんだよ
大菩薩峠:38 農奴の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
明治三十七年の夏休みに陸中釜石かまいし附近の港湾の潮汐ちょうせきを調べに行ったときの話である。
(新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
福島県白河の入りにある甲子の温泉、岩手県釜石かまいしの奥の甲子谷などは、明白にカッシといって川内と区別しているが、その地形から判ずれば元は一つであった。
地名の研究 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
太平洋側では陸中釜石かまいしの附近がその一例であるが、山本鹿洲君の報告では、ササドリ及びアオバという他に、なおボーボーガラとデンボーガラとの二つが数えられた。
この人の青年のころといえば、嘉永かえいの頃なるべきか。海岸の地には西洋人あまた来住してありき。釜石かまいしにも山田にも西洋館あり。船越ふなこしの半島の突端にも西洋人の住みしことあり。
遠野物語 (新字新仮名) / 柳田国男(著)