金看板きんかんばん)” の例文
紳士が事務所の中へ消えてしまってから、そこの金看板きんかんばんを見ると、目羅めら眼科、医学博士はかせ目羅聊齋りょうさいしるしてありました。
目羅博士の不思議な犯罪 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
家は、城下から身延街道みのぶかいどうに近い西青沼のはずれで、家は小さい機屋はたやで、機屋のほかに、御岳おんたけの百草という薬の金看板きんかんばんを出しているという話——そんな話もおぼえている。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
進んで答ふらく、「其の方法は五倫五常の道を守るに在ります」と。翁は頭をつて曰ふ、否々いな/\、そは金看板きんかんばんなり、表面うはべかざりに過ぎずと。因つて、左の訓言をつゞりて與へられたりと。
遺教 (旧字旧仮名) / 西郷隆盛(著)
金にも娑婆しゃばっ気にも不足のない男でしたが、たった一人のせがれ佐太郎さたろうが、素姓のよくない女と一緒になり、それがきっかけで勝負事に手を出し、果ては金看板きんかんばんのやくざ者になり下がってからは
禁句禁句きんくきんく金看板きんかんばん甚九郎じんくろうだっけ。——お蓮さん。一つ、献じましょう。
奇怪な再会 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
「じょ、じょうだんではない。役所沙汰などはふるふるだよ。金看板きんかんばんもだいなしになってしまう」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
配偶つれあひは五年前に亡くなりましたが、たつた一人の伜三之助は、年寄つ子の我儘育わがまゝそだちで、惡遊びから、到頭勝負事にまで手を出すやうになり、金看板きんかんばんのやくざ者になつて、三年前に久離きうりつて勘當され