醵金きょきん)” の例文
そこで町会の役員共が醵金きょきんしてこの屋根裏で子供の始末をつけさせようというのだが、世間は無駄がないもので、役員の一人に豆腐屋がいて
白痴 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
上海シャンハイ寄留の外国人らがその平和を欲するのあまりに、ともに醵金きょきんしてもって二国の争闘を調停せんとしたるがごとき
将来の日本:04 将来の日本 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
また、全校生徒が特別に一円ずつ醵金きょきんして贈呈するはずであった記念品も、まだ用意が出来ていなかった。
次郎物語:04 第四部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
その時分には有志の者が醵金きょきんして構内にうまやをこしらえて、三頭の馬と、馬の先生とを飼っておいた。
三四郎 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
東京市民が、醵金きょきんをし合って献納けんのうした十五機から成る東京愛国飛行隊は、どうしているであろうか。
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
とにかく今日は艶福えんぷくの多い日だッた。……………………日の立つのは早いものでう自分が死んでから一周忌も過ぎた。友達が醵金きょきんしてこしらえてくれた石塔も立派に出来た。
(新字新仮名) / 正岡子規(著)
そこで十五少年の父母は醵金きょきんをしてケートのために閑雅かんがな幼稚園を建て、その園長に推薦すいせんした。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
有志十数名が醵金きょきんして、ナイフやフォークのセットを求めた。責任を感じさせない熱意で、軽少を期したのである。それを祝意と共に新家庭へ取次ぐ役を僕が仰せつかった。
ロマンスと縁談 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
またこれに要する費用の醵金きょきんに関し、その義務としてこれが監督または補助をなすことを要求され、またはこれが監督または補助に関与すべからずと要求さるることはない。
貧乏物語 (新字新仮名) / 河上肇(著)
大抵間食は弾豆か焼芋で、生徒は醵金きょきんをして、小使に二銭の使賃を遣って、買って来させるのである。今日はいつもと違って、大いにおごるというので、盲汁めくらじるということをするのだそうだ。
ヰタ・セクスアリス (新字新仮名) / 森鴎外(著)
両人神奈川県荻野おぎの町にちゃくし、その地の有志荻野氏および天野氏の尽力によりて、同志を集め、結局醵金きょきんして重井おもい(変名)、葉石はいし等志士の運動を助けんとくわだてしかど、その額余りに少なかりしかば
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
自分に対する全職工の支持を決議させて「金菱」が新しく重役を入れることに対して全職工こぞって反対させる。各自が醵金きょきんして、職工と社員の「上京委員」を編成し、関係筋を歴訪、運動させる。
工場細胞 (新字新仮名) / 小林多喜二(著)
そんなわけで、集まった醵金きょきんは実に瑣々ささたるものにすぎなかった。
外套 (新字新仮名) / ニコライ・ゴーゴリ(著)