酸漿ほほづき)” の例文
博士は指先で充血した眼の上瞼うはまぶたつまんで、酸漿ほほづきのやうにひつくり返さうとしたが、直ぐ鼻先に邪魔物が飛び出してゐて、どうも思ふやうにならない。
五〇 死助しすけの山にカツコ花あり。遠野郷にても珍しといふ花なり。五月閑古かんこ鳥のく頃、女や子どもこれを採りに山へ行く。の中にけておけば紫色になる。酸漿ほほづきの実のやうに吹きて遊ぶなり。
遠野物語 (新字旧仮名) / 柳田国男(著)
酸漿ほほづき眞摯まじめはら
思ひ出:抒情小曲集 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
酸漿ほほづきに似てゐた。
富嶽百景 (新字旧仮名) / 太宰治(著)
酸漿ほほづき提灯
十五夜お月さん (旧字旧仮名) / 野口雨情(著)
四条派の名家だつた望月玉泉が、晩年に京都のある高等女学校に、邦画の教師として一週幾時間か酸漿ほほづきのやうな真紅まつかな顔をのぞけてゐた事があつた。
男といふものは自分の女房が酸漿ほほづきのやうに一に閉ぢ籠つて、固くなつてゐるのでなければ、外で酒一つ飲む事の出来ない程の意気地なしである。
それを見ると娘は仰天して酸漿ほほづきのやうに真紅まつかになつた。紳士はまがかたもないワナメエカアの主人だつた。
末松夫人は酸漿ほほづきのやうにになつた。そして泣き顔をして両手で老人を拝むやうな真似をした。
宗教学校ミツシヨン・スクール出の婦人だつたら、そんなのを見て酸漿ほほづきのやうに顔をあかくするかも知れないが、しかしそれは物を知らないからで、お行儀な西洋人にも、肉刀ナイフで物を食べるのは少くない。
自分の恋を打明けるには、酸漿ほほづきのやうにしんから真紅まつかにならない訳にかなかつた。
ある時ずんぐり肥つた、鼻先の酸漿ほほづきのやうに赤い男が玄関に入つて来た。
その男は戯弄からかはれたのだと知ると、酸漿ほほづきのやうに顔をふくらませた。