遺産ゐさん)” の例文
といふのは、せう代に両しんわかれた一人つ子の青木さんは、わづかなその遺産ゐさんでどうにか修学しうがくだけはましたものの、全く無財産むざいさんの上だつた。
(旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
しん石崇せきそうあざな季倫きりんふ。季倫きりんちゝ石苞せきはうくらゐすで司徒しとにして、せんとするとき遺産ゐさんわかちて諸子しよしあたふ。たゞ石崇せきそうには一物いちもつをのこさずしてふ。
唐模様 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
一萬兩の遺産ゐさんを手に入れて、松前屋は再び店を開きました。若い美しい女房、それはお君だつた事は言ふ迄もありません。氣の毒な事に、その婿は八五郎では無かつたやうです。
銭形平次捕物控:282 密室 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)