遺書いしょ)” の例文
と言うのはその秋の彼岸ひがん中日ちゅうにち、萩野半之丞は「青ペン」のお松に一通の遺書いしょを残したまま、突然風変ふうがわりの自殺をしたのです。
温泉だより (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
十一日に貯金の全部百二十円を銀行から引出し、同店員で従兄いとこに当る若者あて遺書いしょしたため、己がデスクの抽斗ひきだしに入れた。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
(下略)道余録はすなわ程氏ていし遺書いしょの中の仏道を論ずるもの二十八条、朱子語録の中の同二十一条をもくして、極めて謬誕びょうたんなりとし、条をい理に拠って一々剖柝ぼうせきせるものなり。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
年景は、自分にあてた山吹の遺書いしょをひらいていたが、それはのろいの文字にみちていた。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
当分とうぶん失踪する。これは遺書いしょである。ドクトル金”
門田虎三郎の遺書いしょだった。
時計屋敷の秘密 (新字新仮名) / 海野十三(著)