遠隔えんかく)” の例文
斯様こん悪句あくくを書いてむくうた。或時君の令弟が遊びに来た。聞けば、細君は別居して、家庭はあまり面白くもなさそうだが、遠隔えんかくの地突込んで聞きもならず、其まゝに打過ぎた。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
しかし私は、遠隔えんかくの地にいて調べられるだけの事は調べてしまった訳であるから、もしあの時分に津村の勧誘かんゆうがなかったら、まさかあんな山奥まで出かけはしなかったであろう。
吉野葛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
實際じつさい地震ぢしんまつたおこることなきくにおいては、生命せいめい財産ざいさん關係かんけいある方面ほうめん研究けんきゆう無意味むいみであるけれども、適當てきとう器械きかいさへあれば、世界せかい遠隔えんかくした場所ばしよおこつた地震ぢしん餘波よは觀測かんそくして
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
県立高女の物置廃屋あばらやは、平生何人も出入せず、かつ、火気に遠隔えんかくした処なるを以て、放火の疑い十分ではあるが、校舎そのものの焼却を目的とする例の放火魔とは全然、手口が違っている。
少女地獄 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
相手国たる独国の海軍根拠地こんきょちウィルヘルムスハーフェンを去ること実に五百六十マイル遠隔えんかくの地にあり、独国軍艦にお目にかかるのには、外野席以上の遠方えんぽうの地点で、これほど縁どおいところはない。
沈没男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
遠隔えんかくの征討軍はすでに全滅のほかはない運命にあった。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)