退路にげみち)” の例文
おりからはげしい疾風はやてさえつのって、みことのくぐりられた草叢くさむらほうへと、ぶがごとくにせてきます。その背後はいごは一たいふか沼沢さわで、何所どこへも退路にげみちはありませぬ。
武右衛門と孫右衛門は左角の鍵屋の軒へ忍んで北谷口で逸する敵の退路にげみちを切取ると共に先頭さきに立つ一人を斬る。荒木、渡辺の二人は万屋の小影に身をひそめて又五郎と附人に当る。
鍵屋の辻 (新字新仮名) / 直木三十五(著)