起請文きしょうもん)” の例文
いよいよ起請文きしょうもんの前書が読み上げられた。これは仇討の宣言綱領といったようなもので、次の四箇条からなりたっていた。いわく
四十八人目 (新字新仮名) / 森田草平(著)
自分の門徒を集めて七カ条の起請文きしょうもんを作り、門下の主立てるもの八十余人の名を連署して、天台座主僧正に差出した。
法然行伝 (新字新仮名) / 中里介山(著)
津崎左近つざきさこんは助太刀のこいしりぞけられると、二三日家に閉じこもっていた。兼ねて求馬もとめと取換した起請文きしょうもんおもて反故ほごにするのが、いかにも彼にはつらく思われた。
或敵打の話 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
清楚せいそな八畳、すみに小さな仏壇がある。床に一枚いちまい起請文きしょうもんを書いた軸が掛かっている。寝床のそばに机、その上に開いた本、他のすみに行灯あんどんがある。庭には秋草が茂っている。
出家とその弟子 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
「さあ、その点は私にも見当がつきませぬのう、ともかく、この私に限って、うしろ暗いことは何一つございませぬ、どうしてもお疑いが解けぬとあっては、起請文きしょうもんを書きまする」
自分も一死がその分であるとは信じている。しかし晴がましく死なせることは、家門のためにも、君侯のためにも望ましくない。それゆえ切腹に代えて、金毘羅こんぴら起請文きしょうもんを納めさせたい。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
うっかりお由良の才智に引っ掛った治三郎は、中年者だけにいろいろ考えたのさ。第一、あんな起請文きしょうもんを商人が書くというのは無法だ。うっかり治三郎に落度があって破談になれば、伊勢屋の身上を
げんに自分さえ高時へ、心にもない起請文きしょうもんをさし出している。
私本太平記:07 千早帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
死後御検分のため遺しおく口上書とは、二日に深川八幡前で認めた仇討あだうちの宣言書と起請文きしょうもんのことで、その中には毛利小平太の名も歴然として記載されてあるこというまでもない。
四十八人目 (新字新仮名) / 森田草平(著)
兵庫ガウチノ様子ヲイロイロ話シテ、ソノ時、橋本ト深津ハ後ヘ残ッテ居テ、以来ハ親類同様ニシテクレトイウテカラ、両人ガ起請文きしょうもんヲ壱通ズツヨコシタ、ソレカラ猶々なおなお本所中ガ従ッタヨ
大菩薩峠:40 山科の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
書面は求馬が今年ことしの春、かえで二世にせの約束をした起請文きしょうもんの一枚であった。
或敵打の話 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
なお、ほかに、七箇条の起請文きしょうもんを書かせて、翌る日
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
が、起請文きしょうもんが自分の前へ廻された時には、ふるえる手先を覚られまいと努めながら、それでも立派に毛利小平太元義と署名して、その下に小指の血を注いだ。そして、それを次の勝田新左衛門に渡した。
四十八人目 (新字新仮名) / 森田草平(著)