貴女あんた)” の例文
「しかし貴女あんたも、この商売はいい加減に足を洗ったらどうです。商売している間は、夜更よふかしはする、酒は呑む、体を壊す一方だからね。」
縮図 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
「全く貴女あんた方にはお気の毒ですよ。……いや、何うも長居をして済みませんでした。」と、私はそんなことを言いながらも
別れたる妻に送る手紙 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
こう云うたかて、多一さんと貴女あんたとは、前世から約束したほど、深い交情なかでおいでる様子。今更ではあるまいけれど、私とは不思議な御縁やな。
南地心中 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「へえ、貴女あんたは女ですかい。」と女史は顔を前へ突き出して、一段と声を張つた。「基督の福音を伝道しながら、御自分では女の積りでお居でだつたのかい。」
『昌作と二人です、今朝出たつきりまだ歸らないんですが、多分貴女あんたとこかと思つて伺つたんです。』
鳥影 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
「お嬢さん——邸奉公なさるって——そりゃあ、一体、貴女あんたの望みか、それとも、この南玉爺の」
南国太平記 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
当然あたりめえの事だ、娘ッ子わしア田舎者ですが、此の火事に焼け出され、彼方此方あっちこっち迯𢌞にげまわって、包を背負しょったまゝ泊る所もねえので、此処らをうろ/\して居る所だが、貴女あんたの死のうとするのを見掛け
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
なにも昨日や今日に来た貴女あんた一人の眼には映らんわ。
蒲団 (新字新仮名) / 橘外男(著)
「トムちやん、これ貴女あんたの花輪よ」
女王 (新字旧仮名) / 野口雨情(著)
貴女あんたな、ようこそ、芝居の裏で、おじいはんの肩さすって上げなはった。多一さんも人目忍んで、貴女の孝行手伝わはった。
南地心中 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
昌作しやうさんと二人です、今朝出たつきりまだ帰らないんですが、多分貴女あんたとこかと思つて伺つたんです。』
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
「成程貴女あんたはたんと子供さんをお持ちだ。さうしてみんな男の子供さんだと聞いてゐる。どんなに立派におなりか、今から目をあいて見てらう。」と言つて婆さんはち上つた。
「いやになったらいつでも迎えに行ってあげる。芳町のねえさんも貴女あんたを待っている。」
縮図 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
言いなされ! 昨日祝言がすんだばかりで何の理由があって家へ帰らせられる? 幽霊? 莫迦な! 幽霊が出るから家へ戻って来たと貴女あんたは親許へ戻っていいなさる気か! 阿呆らしい! 家に幽霊が出るもんなら
蒲団 (新字新仮名) / 橘外男(著)
おお、まだ年のかぬ、嬰児ねねはんや。多一はんと、酒事ささごとしやはった覚えがないな。貴女あんた盞を先へ取るのを遠慮やないか。
南地心中 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
貴女あんたは素破ぬいたつもりかも知らないけれど、私は平気だわ。貴女は一体ここを誰の座敷だと思っているの。仮にも人の座敷へ呼ばれて来て、気の利いたふうな真似まねをするもんじゃないわよ。」
縮図 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
貴女あんたンの?』
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
貴女あんたはよく稼ぐというじゃないかね。どうしてそう困るね」
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)