おく)” の例文
うまやの御料一匹おねだり申そうかと考えたが、もし、下された馬がさほどの逸物でなかったら、合戦に臨まぬうちから、我のみおくれをとる。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
卑しい俳優わざおぎと、さげすまれてはいるものの、魂では、いかなるもののふにも、おくれは取らじと思うているわたし、いつ逢うても、汚らわしいことばかり口にするそなたの言葉を聴いて
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
果たして、一千の三河兵と、その部将松平勘四郎は、尾濃三万の中に伍して、どこの戦いに会しても、おくれはとらなかった。
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「てまえ、年は各〻よりも、すこしっておるが、戦場と、酒の場では、まだおくれをとらないつもりでござる。さあ、端からいただきましょう」
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「他の者は、瀬兵衛について来い。摂州茨木いばらきこのかた、おくれは知らぬ中川勢ぞ。面とむかった敵には、尺地も退くな」
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「九郎か。その後は侍勤めにも馴れたか。奥州みちのくとは事ちがい、坂東武者はみな気があらい。豪毅ごうき勇壮で目ざましかろうが。——そちも人々におくれをとるなよ」
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
三浦、熊谷くまがい、畠山、足立、平山などの諸将をはじめ、その部下にいたるまでが、われおくれじと、きそっていた。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、髀肉ひにくたんじて、兄にも人にも洩らしているほど、武勇にかけても、人におくれぬ自信はあった。
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)