負債おいめ)” の例文
神の前に出ようとする者は、まず己に負債おいめある者をゆるし、己の敵の罪を赦さねばならない(マタイ六の一二—一五参照)。
かえってその気もちが負債おいめのように栄三郎をおさえて、それが彼を弥生から離していったのかも知れなかった。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
我らの日用の糧を今日もあたえ給え、我らに負債おいめあるものを我らのゆるしたるごとく、我らの負債をも免し給え。我らを嘗試こころみに遇せず、悪より救い出し給え……アーメン
反逆 (新字新仮名) / 矢田津世子(著)
日も待たず、そのあけの日の夕暮時、宝の市へ練出す前に、——丸官が昨夜ゆうべ芝居で振舞った、酒の上の暴虐ぼうぎゃく負債おいめを果させるため、とあって、——南新地の浪屋の奥二階。
南地心中 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
しかしマリユスは一日たりとも意気沮喪そそうしなかった。彼は困苦ならばすべてを受け入れ、負債を除いてはあらゆることをなした。自分は何人なんぴとにも一文の負債おいめもないと、彼は自ら公言していた。
人を量るが如くに量らるるのである、其日に於て矜恤あわれみある者は矜恤を以て審判さばかれ、残酷無慈悲なる者は容赦なく審判かるるのである、「我等に負債おいめある者を我等がゆるす如く我等の負債おいめを免し給え」
我らの日用の糧を今日も与えたまえ、我らに負債おいめある者を我らのゆるしたる如く、我らの負債をも免したまえ。我らを誘惑こころみに遇わせず、悪より救い出したまえ
キリスト教入門 (新字新仮名) / 矢内原忠雄(著)
いかににがき運命の愚弄ぐろうぞ! 父はひつぎの底から彼に、でき得る限りの好意をテナルディエにつくすよう命じていた、そして四年の間彼は、父に対するその負債おいめを果たさんとの念しか持っていなかった。