譬喩たとへ)” の例文
併し出來難きものの譬喩たとへに、影を捉へるといふことを以てした程の當時の無智識の闇の裏に在つて、一歩進んだ智識を有した二人が
努力論 (旧字旧仮名) / 幸田露伴(著)
で、立騰たちのぼり、あふみだれる蚊遣かやりいきほひを、もののかずともしない工合ぐあひは、自若じじやくとして火山くわざん燒石やけいしひと歩行あるく、あしあかありのやう、と譬喩たとへおもふも、あゝ、蒸熱むしあつくてられぬ。
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
譬喩たとへに引くも異なものなれど、いはゆる明治の元老が、どの様な夫人を持つて、それがいかに社会から、好遇されてゐるかを知らぬ、田舎ものの、寐言ならば、いざ知らず。
移民学園 (新字旧仮名) / 清水紫琴(著)
其の二つの譬喩たとへの示すが如く、人もまた張る氣で事を做し務を執るのと、弛んだ氣で事を做し務を執るのとでは、大なる差異を其の結果に生ずる。
努力論 (旧字旧仮名) / 幸田露伴(著)
近く譬喩たとへを設けて之を説かうか。人は皆容易に予の意を領得するで有らう。助長とは讀んで字の如しで助け長ずるのである。剋殺は剋し殺すのである。
努力論 (旧字旧仮名) / 幸田露伴(著)
末に至りては大河をなし海をなすといへる譬喩たとへも目前なり、此道理にて我今少しの元手なれども一稼ぎ働かば以前の大身代に立戻らんこと遠きにあらじ、さても用無き隠者がゝりかなと悟り
花のいろ/\ (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
水漂草の譬喩たとへに異ならず、いよ/\心を励まして、遼遠はるかなる巌のはざまに独り居て人め思はず物おもはゞやと、数旬しばらく北山の庵に行ひすませし後、飄然と身を起し、加茂明神に御暇おいとままをして仁安三年秋の初め
二日物語 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)