詰込つめこ)” の例文
窮屈な小さい箱の中に詰込つめこまれて、藩政の楊枝をもって重箱のすみをほじくるその楊枝のきにかかった少年が、ヒョイと外に飛出して故郷を見捨るのみか
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
つれの男も、身体からだつきから様子、言語ものいい、肩のせた処、色沢いろつやの悪いのなど、第一、屋財、家財、身上しんしょうありたけを詰込つめこんだ、と自らとなえる古革鞄ふるかばんの、象を胴切りにしたような格外のおおきさで
革鞄の怪 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
その日、いつものように、のそりのそり二階へ上って行った時、わたくしは朝鮮人らしい痘痕あばたの目につく若い洋服の男が、化粧用の品物を詰込つめこんだ革包かばんの中を、そろそろ片づけ初めているのを見た。
勲章 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
差当さしあたり、出家の物語について、何んの思慮もなく、批評も出来ず、感想もべられなかったので、言われた事、話されただけを、不残のこらず鵜呑うのみにして、天窓あたまから詰込つめこんで、胸がふくれるまでになったから
春昼後刻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)