訴訟そしょう)” の例文
農村に於ける訴訟そしょう事件といえば全国大概似たようなもので、親友とか縁者から田畑とか金をかりて心安だてに証文を渡さなかったのをよいことに
土の中からの話 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
その父の歿後どこかから妾腹しょうふくの子と名乗る女が出て来て、一時は面倒な訴訟そしょう沙汰にさえなった事があると云う事——そう云ういろいろな消息に通じている俊助は
路上 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
いやなら訴訟そしょうをする。そして、君の過去の秘密を洗いざらい曝露ばくろしてやる。映画界にいたたまれないようにしてやる。それでもいいのかね。それじゃあ困るだろう。
月と手袋 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
あの夫人はしょっちゅう何かしら訴訟そしょうや事件を起こしていて——それも卑しい金銭問題ド・ヴィレーン・ザフエール・ダルジャンなのだから——てっきりとんでもない食わせ者にちがいない、といった散々の評判だった。
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
禁闕きんけつを守衛し、官用を弁理べんりし、京都、奈良、伏見ふしみの町奉行を管理し、また訴訟そしょう聴断ちょうだんし、兼ねて寺社の事を総掌そうしょうする、威権かく々たる役目であって、この時代の所司代は阿部伊予守あべいよのかみ
娘煙術師 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
しゃ二、その日は彼をなだめて引き取らせた。つまり早や訴訟そしょう却下きゃっかの形である。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
地所じしょ売買ばいばいや、訴訟そしょう代理人だいりにんなどになってて、そんなことで報酬ほうしゅうて、その一のものはらしていたのですが、物識ものしりというとおっているので、このもののいったことは、むらでは
天下一品 (新字新仮名) / 小川未明(著)
三の重要な人物と相識そうしき間柄あいだがらであるが、今や夫人はすこぶる重大な訴訟そしょうを起していて、彼女自身の運命もまたその子女の運命も、かかってそれら人物の手中にあるというのである。
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)