言振いいぶり)” の例文
しかし待ち構えていた奥さんが気を附けて様子を見ると、どうも物の言振いいぶりが面白くないように思われた。
かのように (新字新仮名) / 森鴎外(著)
男らしいうちにも愛嬌あいきょうのある物の言振いいぶりで、「私は中学校に居る時代から原先生のものを愛読しました」
並木 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「何だね、その不思議な願と言うのは?」と近藤は例のしつけるような言振いいぶりで問うた。
牛肉と馬鈴薯 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
にこにこ笑いながら、縮緬雑魚ちりめんざこと、かれい干物ひものと、とろろ昆布こんぶ味噌汁みそしるとでぜんを出した、物の言振いいぶり取成とりなしなんど、いかにも、上人しょうにんとは別懇べっこんの間と見えて、つれの私の居心いごころのいいといったらない。
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
男は目を大きくみはって部屋中をあちこち見廻している。それから何事かに落ちぬという様子で、腹立たしげに頭を振って、それから歯の間から空気を押し出すようなものの言振いいぶりをして、こう云った。
みれん (新字新仮名) / アルツール・シュニッツレル(著)