角力ずもう)” の例文
そのための実際の計画を考顧しなかったなら、矢張りこの四五人の、それだけで少しも発展性のない、ひと角力ずもうに終ってしまうのだ。
党生活者 (新字新仮名) / 小林多喜二(著)
性慾にいての、あのどぎまぎした、いやらしくめんどうな、思いやりだか自惚うぬぼれだか、気を引いてみるとか、ひとり角力ずもうとか
メリイクリスマス (新字新仮名) / 太宰治(著)
お江戸の辻芸人にはひと角力ずもうというのがありましたが、わっしゃこれから一人で二人前のかけあい話をやりますよ。時に、ねえ、弁信さん
大菩薩峠:32 弁信の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
秀吉と家康との、こんどの会戦は、まさに天下の横綱角力ずもうであり、両者は、たがいに相手の何者なるかを、知りつくしている。
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
するようになってからはあの通り女角力ずもうのように肥ってしまいましたが、あれでも若い時がありましたよ、ヘエ
僕が客間サルーンへ出ると、人々は足角力ずもうの競技にふけっていた。踊場ではびっこの老夫婦が人形を抱いて踊っていた。食堂では角帽の中学生が恋人の女学生の話しをしている。
飛行機から墜ちるまで (新字新仮名) / 吉行エイスケ(著)
いや、可笑おかしいやら、見事やら、『コルシカの鼻輪』といって、牛角力ずもうを見るくらいの衆なら、今でも噂に出るくらいのものでがす。すると一昨年の夏のことでがした。
あるいはきわめて芸能なき者ならばともに会食するもよし、茶を飲むもよし。なお下りて筋骨の丈夫なる者は腕押し、枕引き、足角力ずもうも一席の興として交際の一助たるべし。
学問のすすめ (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
元気のいい老人だったよ、どうも。酔うといつでも大肌おおはだぬぎになって、すわったままひとり角力ずもうを取って見せたものだったが、どうした癖か、唇を締めておいて、ぷっぷっとつばき
親子 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
僕がやっきになって一人角力ずもうをとっているうちにとうとう僕は赤裸はだかになってしまった。
海底都市 (新字新仮名) / 海野十三(著)
ひとり角力ずもうをやっていて、精神的なめまいともいうべき錯乱に陥ったのではないか。
いやな感じ (新字新仮名) / 高見順(著)
「誰か、この元気者と腕角力ずもうをとっちみい」
南方郵信 (新字新仮名) / 中村地平(著)
しかし、こっちで独り角力ずもうを取っているまに、幸村は、自分を通して、細川家の意志なり、近状なりを、雑談の端からでも、ぎ取っているかも知れない。
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
けれども、このひと角力ずもうも、もうヘトヘトに疲れきって道庵は、屍骸のわきの下へ頭を突込んだかと思うと、やがてグウグウいびきを立てて寝込んでしまいました。
大菩薩峠:19 小名路の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
独り角力ずもうを取って背負投げを喰ったようなものだ。幸いお専は助かったが、竜吉は可哀想に——
新婚者と、女角力ずもうになったタルタン、彼女のために殺されてしまった花聟はなむこ、歓楽の夜の海を水自転車で彼にあたえた、妖婦タルタンの愚かな行動、水底深く死んだ花聟のダンデズム、影は水に映る。
飛行機から墜ちるまで (新字新仮名) / 吉行エイスケ(著)
ひとり角力ずもうの馬鹿らしさにも気がついたのだ。
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)