見上みあぐ)” の例文
見上みあぐる山には松にかゝりて藤の花盛りなり見下みおろせば岩をつゝみて山吹咲こぼれたり躑躅つゝぢ石楠花しやくなげ其間に色を交へ木曾川は雪と散り玉と碎け木曾山は雲を吐きけぶり
木曽道中記 (旧字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
葡萄の棚より露重げに垂れ下る葡萄を見上みあぐれば小暗おぐらき葉越しの光にそのふさの一粒一粒は切子硝子きりこガラスたまにも似たるを、秋風のややともすればゆらゆらとゆり動すさま
葡萄棚 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
仕廻しまつて休むがいゝといふに下男彌助何さま然樣さやう致さんと早々に見世をかたつけいま戸をたてんとする處へ見上みあぐる如き大兵の武士てつ禪杖ぜんぢやうを引さげつか/\と這入はひり來り是々若いもの酒を一升かんを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
フレデリック大王もまた絶世の建国者なり、しかれども誰か彼を以て人類の摸範と見上みあぐるものあらんや、基督は万世に至るまでこの世を救うべきものなれば彼は政治家たるべからざりしなり。
基督信徒のなぐさめ (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
ば加へたり此の時少し篁村息をき河原に立やすらひて四方を眺めくえたる崕道がけみち見上みあぐるに夫婦連めをとづれ旅人たびゝと通りかゝり川へ下りんも危うし崖を越んも安からずとたゝずみ居しがやがて男はくえたる處ろへ足を
木曽道中記 (旧字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
この身のおわりを覚悟して見上みあぐる苦悩の大空おおぞら