ふた)” の例文
木場の甚さんにも話して、一小屋引き請けることになっているのだから、この分だと、いよいよ祭がきてふたをあけるのがたのしみだ。
巷説享保図絵 (新字新仮名) / 林不忘(著)
同志一 (ストウブのふたをあけて黄成鎬へ)おやじ! 火を入れろ。
と、女が内懐うちぶところを押えた刹那せつな、ぱっと頭上のふたがあいて、外部の冷気とともに黄色の光線ひかりの帯が、風のように流れ込んだ。
つづれ烏羽玉 (新字新仮名) / 林不忘(著)
井戸一帯に燐の粉がこぼれて、それに鬱気うつきを生じ、井戸の中、ふたの石、周りの土までが夜眼にも皓然こうぜんと輝き渡っていたその理を、彼は不幸にもわきまえなかったのだ。
白痴ばかか茶番か、女は自分で今買い取った鎧櫃のふたをあけて、裾を押えてはいり込もうとしている。
つづれ烏羽玉 (新字新仮名) / 林不忘(著)
本所割り下水石原新町のそば、牛の御前の旅所へ届けるように頼んで、ぱたんとふたをしてもらったのだが、あの閑山とかいうお爺さん、だいぶあっけに取られていたようだよ。
つづれ烏羽玉 (新字新仮名) / 林不忘(著)