裏河岸うらがし)” の例文
当時いちばん若かったKちゃんが後年ひとかどの俳人になって、それが現に銀座裏河岸うらがしに異彩ある俳諧はいかいおでん屋を開いているのである。
銀座アルプス (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
柳橋の裏河岸うらがしに、大代地おおだいじに、大川の水にゆらぐ紅燈こうとうは、幾多の遊人の魂をゆるがすに、この露路裏の黒暗くらやみは、彼女の疲労つかれのように重く暗くおどんでいる。
以前ぶらぶらしていた時分行きれた八丁堀はっちょうぼり講釈場こうしゃくばの事を思付おもいついて、其処そこで時間をつぶしたのち地蔵橋じぞうばし天麩羅屋てんぷらやで一杯やり、新富町の裏河岸うらがしづたいに帰って来ると
雪解 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
電信局の横手からかけて来た車に、芸妓げいしゃ箱丁はこや合乗あいのりして居るその芸妓が小歌らしいので、我知らず跡逐駈おっかけるとその車は裏河岸うらがしの四五間目で停って、小歌と思ったのは夜目にも紅い幽禅ゆうぜんたもと
油地獄 (新字新仮名) / 斎藤緑雨(著)
日ごろからいだいていたこんな考えが昨今カメラをさげて復興帝都の裏河岸うらがしを歩いている間にさらにいくらかでも保証されるような気がするのである。
カメラをさげて (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
手近な些末さまつな例をあげると、銀座ぎんざ裏河岸うらがしのある町の片側に昔ふうの荷車が十台ほどもずらりと並べておいてある、その反対側にはオートバイがこれも五、六台ほど並んで置かれてあった。
カメラをさげて (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)