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うらがし
以前ぶらぶらしていた時分行き
馴れた
八丁堀の
講釈場の事を
思付いて、
其処で時間をつぶした
後地蔵橋の
天麩羅屋で一杯やり、新富町の
裏河岸づたいに帰って来ると
電信局の横手から
駈て来た車に、
芸妓と
箱丁と
合乗りして居るその芸妓が小歌らしいので、我知らず跡
逐駈るとその車は
裏河岸の四五間目で停って、小歌と思ったのは夜目にも紅い
幽禅の
袂に
たゝつたな——
裏川岸の
土藏の
腰にくつ
付いて、しよんぼりと
立つたつけ。
晩方ぢやああつたが、あたりがもう/\として、
向う
岸も、ぼつと
暗い。
折から
一杯の
上汐さ。