ゆき)” の例文
ゆきの長いジャンパアを着てゐるので、如何にも實直さうな男だつた。孝次郎はアルマイトの煙草のケースを出して親爺に進めた。
(旧字旧仮名) / 林芙美子(著)
「妙なことがあるものですね。わしは年々着物が大きくなりますよ。この間一重に着替えたら、ゆきたけも一寸近く伸びていました」
親鳥子鳥 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
まだ左のたもとの下に包んだままで、撫肩なでがたゆきをなぞえに、浴衣の筋も水に濡れたかと、ひたひたとしおれて、片袖しるく、悚然ぞっとしたのがそのままである。
悪獣篇 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「お丈が拝見したいんですの、ゆきは大丈夫だと思うのですけれど、なんですかお丈がちょっと……」
彩虹 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
ゆきを、いくら伸して見ても、女の着物の仕立は、一尺七寸五、六分より裄は出ない。
田沢稲船 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
「ふうん」と和尚おしょうは腕組を始めた。ゆきが短かいので太いひじ無作法ぶさほうに見える。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
彼は着衣のゆきをひっぱって右から左と見まわした。
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
そうしてゆきの長過ぎる古外套ふるがいとうを着た両手を前の方に出して、ポンチ絵に似た自分の姿を鑑賞でもするように眺め廻した後で、にやにやと笑いながらお延を見た。お延の声はなお鋭くなった。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ゆきの長い半纏はんてんに着換えたでござります。
星女郎 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「ええ——まあ——」と生返事なまへんじをした時、甲野さんは背を引いて腕を組んだ。同時に洋卓の下で、右足の甲の上へ左の外踝そとくろぶしを乗せる。母の眼からは、ただゆきの縮んだ卵色の襯衣シャツの袖が正面に見える。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「私?」と羽織のゆきをそろえて、ひもを結んだ。
三四郎 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
わたくし?」と羽織のゆきそろへて、ひもむすんだ。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
両袖りょうそでゆきを引っ張って見せる。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)