袖畳そでだた)” の例文
旧字:袖疊
彼は煙草へ火をけようとして枕元にある燐寸マッチを取った。その時袖畳そでだたみにして下女が衣桁いこうへかけて行った縕袍どてらが眼にった。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「そうですよ。きのうのようじゃあどうすることも出来ません」と、亀吉も羽織を袖畳そでだたみにしながら云った。
半七捕物帳:50 正雪の絵馬 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
立ち上がって、押入から袖畳そでだたみにした子供の着物を出して、平次の前に押しやります。
それは袖畳そでだたみにしたのではなく、ごく乱暴に丸めたもので、僕が一目見てこいつは曽恵子さん自身が丸めたものではないなと考えた通り、しらべて見ると、その縞銘仙しまめいせん単衣ひとえものの中には
悪霊 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
鼠地ねずみじのネルを重ねた銘仙めいせん褞袍どてらうしろから着せるつもりで、両手でえりの所を持ち上げたお延は、拍子抜ひょうしぬけのした苦笑と共に、またそれを袖畳そでだたみにしてとこすその方に置いた。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
宗近君は米沢絣よねざわがすりの羽織を脱いで、袖畳そでだたみにしてちょっと肩の上へ乗せたが、また思い返して、今度は胸の中から両手をむずと出して、うんと云う諸肌もろはだを脱いだ。下から袖無ちゃんちゃんあらわれる。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)