蜀江しょっこう)” の例文
大臣も不承不承慎んで馬の糞を金箕でける役を勤めたとあらば、定めて垂れ流しでもあるまじく、蜀江しょっこうの錦ででもぬぐうたであろう。
そのいでたちを見るに、緋房ひぶさのついた鉢兜はちかぶと鋳物綴いものつづりの鍍金ときんよろい、下には古物ながら蜀江しょっこうの袖をちらつかせ、半月形はんげつなりかわ靴をはいた。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
台の上に掛けたのは、凄まじくも物々しい蜀江しょっこうにしき——もっとも、これは大贋物おおまがいものです。
蜀江しょっこう模様の帯を高くしめ、振りのたもとを永く曳いて、紅緒べにお草履ぞうりもそのもすそにかくれていようという——まことに山越えの旅にはふさわぬ身支度で、顔さえも
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
信長の着用する蜀江しょっこうの小袖の袖口につかう金縒モールを捜すため、京都中を奔走ほんそうしてようやく適当な品を見出したというほど、金力と人力がそれまでにはかかっていたものである。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
白鷺の白さをあざむく白縮緬しろちりめんの小袖に、公卿くげ紋の雪頂笹ゆきのせざさを紫に染め、帯は蜀江しょっこうか西陣か見分けもつかぬような絢爛けんらん。もの云うごとに玉虫色の唇は、妖魅ようみの如き美しさをたたえる。
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
蜀軍あり、と叫ぶものがあったので、司馬懿が駒を止めてみると、まさしく一ぴょうの軍馬が、蜀江しょっこうの旗と、丞相旗じょうしょうきを振りかかげ、また、一輛の四輪車を真っ先に押して馳け向ってくる。
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、大機嫌で、一人一人の者へ蜀江しょっこうの錦一ぴきずつけ与え
三国志:08 望蜀の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)