しえた)” の例文
二郎は邸を見廻って、強い奴が弱い奴をしえたげたり、いさかいをしたり、盗みをしたりするのを取り締まっているのである。
山椒大夫 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
それを、上目づかいのあごで下から睨上ねめあげ、薄笑うすわらいをしている老婆ばばあがある、家造やづくりが茅葺かやぶきですから、勿論、遣手やりてが責めるのではない、しゅうとしえたげるのでもない。
雪柳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
その界隈の土地をも民をも、勝手にしえたげている。
口で言うだけでも、お冬さんを、我が手でいじしえたげるにひとしいんですから、ただ幻に見て、爪のさきまで、青くなった時に、お冬さんが一言ひとことかすかにいいました。
雪柳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
が、こしらえものより毬唄の方が、現実を曝露ばくろして、——女はすみやかしえたげられているらしい。
灯明之巻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)