蘇返よみがえ)” の例文
その日は相憎あいにくの大夕立で出足を阻まれ平次とガラ八が出動する頃になって、残る夕映の中に、漸く町々の興奮は蘇返よみがえって行く様子でした。
夫人 しばらく! 折角、あなたのお土産を、いま、それをお抜きだと、衛門之介も針が抜けて、蘇返よみがえってしまいましょう。
天守物語 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
あらゆる歓びと希望がより一層よい形で蘇返よみがえって来た今の嬉しさに泣く下から微笑を押えることが出来なかったのである。
地は饒なり (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
その忘れられた緊張が文子の心に蘇返よみがえつてゐた。いはば文子は意志のない行為の中に、自分の意志をむしろ激しく生かしてゐるのに気付かないのだ。
すると、おつたくわえておいたみずきかかったころ、にわかにそらくもって大雨おおあめってきました。そして一井戸いどにはみずて、草木くさき蘇返よみがえりました。
神は弱いものを助けた (新字新仮名) / 小川未明(著)
「蘇生なさるようなことはございますまいか。自訴なさッた後で蘇返よみがえったりしたら、飛んだ物笑いになりますから」
湖畔 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
まだ名物の桜のつぼみも固く、道の枯草に浅緑も蘇返よみがえらず、うるんだような宵月が、二人の影法師を長く苅田の中へ引いて居ります。
銭形平次捕物控:245 春宵 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
ために私は蘇返よみがえりました。
雪霊記事 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
もとより萩江鞍馬が、其辺に居ると思ったわけではありませんが、五年間自分を尋ねてくれたと言う純情的な武士の名が絶望的なお鳥の唇へ、フッと蘇返よみがえったのです。
裸身の女仙 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)