蕃椒たうがらし)” の例文
此日には刀自の父榛軒が壽阿彌に讀經どきやうを請ひ、それがをはつてから饗應してかへす例になつてゐた。饗饌きやうぜんには必ず蕃椒たうがらしさらに一ぱい盛つて附けた。壽阿彌はそれをあまさずに食べた。
寿阿弥の手紙 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
宛如さながらあき掛稻かけいねに、干菜ほしな大根だいこんけつらね、眞赤まつか蕃椒たうがらしたばまじへた、飄逸へういつにしてさびのある友禪いうぜん一面いちめんずらりと張立はりたてたやうでもあるし、しきりに一小間々々ひとこま/\に、徳利とくりにお猪口ちよく、おさかなあふぎ
飯坂ゆき (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
衿巻掻除かきのけて彼のでたる鼻はあけに染みて、西洋蕃椒たうがらしえたるに異らず。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
蟹を搗き蕃椒たうがらしり筑紫びと酒のさかなに噛む夏は来ぬ
雀の卵 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)